転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


400 そう言えば僕まで行っちゃったらダメだよね



 上からいくら声を掛けても、だぁれもご返事してくれないでしょ?

 だから何でかなぁ? って考えたんだけど、そしたら思いついちゃったんだ。

「そっか。僕が撃ったのはマジックミサイル一発だもん。だからまだもう一匹いるって思って集中してるのかも?」

 バリアンさんたちはロルフさんがずっと雇ってるっていうくらいだから、すごい冒険者さんなんだって思うんだよね。

 そんな人たちだったら、相手が弱っちい魔物だったとしても戦うってなったらすっごく集中すると思うんだ。

 だからね、こっちに向かってくるジャイアントラットがいつ来てもいいようにってずっとそっちを気にしてるから、僕が上から声を掛けても気付かないんじゃないかな?

 そう思った僕は急いでかごを上まで持ち上げると、登り棒に飛びついてするするって降りてったんだよね。

 でね、バリアンさんのそばまで行くと腰をポンポンって叩いて、

「ねぇ、バリアンさん。一匹は僕が魔法でやっつけたし、もう一匹のジャイアントラットもそれを見て逃げてっちゃったからそんなにずっと見てなくっても大丈夫だよ」

 ずっと見てても、もうジャイアントラットは来ないよってもういっぺん教えてあげたんだ。

 そうすればいくら魔物に集中してても、僕が言ってる事に気が付くと思ったからね。

「……向かって来ていたのは、本当にジャイアントラット二匹だったのか?」

 そしたらバリアンさんはね、体はずっとジャイアントラットがいた方を向いたまま、顔だけこっちに向けてこう聞いてきたんだよね。

 だから僕、うんそうだよって答えたんだ。

「ほんとだよ。あっちに行けば、僕がやっつけたジャイアントラットが倒れてるもん。それとね、もう一匹はそれを見て逃げてっちゃったから、もういないよ」

「そうか。ならば一度、確かめに向かわないといけないな」

 でもね、バリアンさんはコドンこの僕がやっつけたって聞いても信じていないのか、見にいかなきゃって言うんだよね。

「僕、ちゃんとやっつけたもん! 見にいかなくったって大丈夫だよ!」

 だから怒って、ちゃんとやっつけたもん! って言ったんだけど、そしたらバリアンさんは大慌てで、そう言う意味じゃないんだよって。

「あっ、いや、それを疑っているわけではないんだ。俺たちの位置からでも、君が魔法を撃つのが見えたからね。だがその場では逃げたように見えたとしても、もしかすると引き返してくるかもしれないだろう?」

「そっか。さっきは逃げてっちゃったけど、もしかしたらまたこっちに来てるかもしれないもんね」

 さっきは仲間のジャイアントラットがやっつけられてのを見て逃げてったけど、あれはただびっくりしただけかもしれないよね。

 それに一度僕の方を見てから逃げてったでしょ?

 だからもういっぺん木の上を見たら僕がいないもんだから、もう安心だって引き返してくるかもしれないもんね。

「ああ、だからここはあそこのデカい二人に任せて、倒したジャイアントラットの回収がてら周りの確認をして来ようと思っている」

「ボルティモさんと? じゃあさ、僕も行っていい?」

 僕、探知魔法で周りに魔物がいるかどうかわかるでしょ?

 だから一緒に行ってもいい? って聞いたんだけど、そしたらダメって言うんだ。

「いや、ここに来たのはベニオウの実の収穫のためだろう? 今現在、この木に登れるのは君だけなんだから、確認作業は俺とエルシモでやってくるからここに残って作業を続けてくれ」

「そっか。ロルフさんたちにいっぱい採ってきてねって頼まれてるもんね。うん、解った! 僕、また木に登って採ってくるよ」

 そう言えばさっきボルティモさんも、ベニオウの実がなってる枝までは一番軽い装備をつけてる自分でも登るのは無理って言ってたもんね。

 そう思った僕は、ジャイアントラットの事をバリアンさんとボルティモさんに任せて、また登り棒を使ってベニオウの木に登ってったんだ。





「何だ、今のは」

 俺たち冒険者は、魔法による攻撃というものをあまり見た事が無い。

 これは魔法使いが総じて裕福な家庭に生まれたものか貴族でもなければ覚える事ができず、そのような出自の者が冒険者になる事などまずありえないからな。

 だがこの仕事をしていると、何かの攻撃であればそれがどれくらいの威力があるのかある程度想像できるようになる。

 それ故に木の上から我々が見ている方向へと放たれた光弾を見た俺は、それが現実に起こった事だとはすぐに理解できなかったんだ。


 俺は放心状態だったところをリーダーであるバリアンさんに腕をつかまれ、そのまま先ほどルディーン君が魔法を放った方向への探索に出る事になった、

 そしてしばらくすると、前方に倒れたジャイアントラットを発見。

 すぐさまバリサンさんがかけ出してその死骸を調べ出したのだが、すぐに表情を硬くすると俺を呼び寄せたんだ。

「おい! 見てみろ、これを」

 俺はバリアンさんに言われた通り、倒れてるジャイアントラビットを観察した。

 するとすぐに、何故バリアンさんが俺に死体を見て驚いた理由が理解できたんだ。

「このジャイアントラット、頭を貫かれていますね」

「ああ、見事なものだ」

 ジャイアントラットのような突進系の魔物は、総じて頭蓋骨が体の中で一番硬い。

 にもかかわらずこいつは、その頭を撃ち抜かれて死んでたるのだから驚くのも無理はないだろう。

 という事はルディーン君の魔法であれば、ジャイアントラッドのどこの部位に当たったとしても大きなけがを負わせることができると証明されたようなものなのだから。

「それにだ。木の上から撃ったにも関わらず、眉間ど真ん中を撃ち抜いていると言うのは見事としか言いようがないな」

 そう言って、深くため息をつくバリアンさん。

 最初は気が付かなかったけど、言われてみると確かに眉間のど真ん中を撃ち抜かれている。

 だけど、それほど驚く事なのだろうか?

 ルディーン君はさっき、ジャイアントラットが自分たちの方へと向かっていると言っていたはずだよな。

 それなら撃った魔法が眉間に当たっていたとしても、それほど驚くような事ではない気がするのだけれど。 

 しかし俺のこの考えは、すぐさま否定されることになる。

「その顔からすると、どうやらこれの凄さがエルシモにはよく解っていないようだな」

「と言うと、これはすごい事なのですか?」

「当り前だろう。ルディーン君は俺たちがいた位置よりはるかに高い、ベニオウの木の枝からこいつを狙撃したんだぞ」

 例えば真正面から矢を射ったのであれば、頭の正面に当たるのは当たり前だ。

 でもルディーン君が撃ったのは、かなり上の方からだ。

 その上、比較的足が遅い魔物であるとは言え、このジャイアントラットは自分たちの方へと移動していたのだから頭の上の方ならともかく、眉間に当てるのは至難の業だろう。

「でも、偶然じゃないんですか?」

「確かに、その可能性はある。だがな、俺は狙って撃ったのではないかと考えているんだ」

 バリアンさんがその根拠にあげたのは、ルディーン君のある行動だった。

「彼は最初、俺たちに声を掛けてジャイアントラットの処理を任そうとしただろう?」

「ええ、そうですね」

「だがその後すぐに、魔法で攻撃するという判断に切り替えた。それは何故だと思う?」

 そう言えばそうだ。

 魔法で撃退するつもりなら、わざわざ俺たちに注意喚起する必要なんかない。

 そう考えると、あの時点では俺たちに任せるつもりだったのだろう。

「う〜ん、そうですねぇ。子供だけに、気が変わったのではないでしょうか?」

「いや、多分ルディーン君は俺たちの様子を見て、一度に二匹を相手にするのは無理と判断したのだと思う」

 俺はこの言葉を聞いて、ものすごいショックを受けた。

 だって、相手はジャイアントラットだぞ?

 確かにたやすくかたずけられるような魔物ではないけれど、一匹ずつ対処すれば大したケガを負う事なく倒す事ができたはずだ。

「それじゃあまさか、俺たちが負けると思ったと言うのですか!?」

「いや、それは無いだろう。だがもし戦闘になれば、収穫した実を守り抜く事はできないだろうとは考えたんじゃないかな」

 そう言って苦笑いするバリアンさん。

 しかし俺は、その言葉を聞いて唖然とした。

 確かにその可能性は高かったからだ。

「あの時俺たちはジャイアントラットが向かって来ていると聞いて”その場で”臨戦態勢に入った。要するに、あそこで迎え撃とうとしたんだ。干し草の上に置いておかなければ自重でつぶれてしまうほどもろいベニオウの実がたくさんある、あの場所で」

 それを見て俺たちには任せられないとルディーン君が判断し、自らの魔法で撃退する事にしたのではないかとバリアンさんは言った。

 そしてその判断は、多分正しかったのだろうとも。

「あんな小さいにもかかわらず、瞬時にそんな判断が下せるとは流石グランリルの村の子だな」

「では、バリアンさんが眉間に魔法を当てたのが偶然ではないと思ったのは」

「ああ。判断から攻撃までの時間を考えると、あの放った魔法で確実にジャイアントラットを仕留められると考えたとしか思えない。ならば急所である眉間に当たっているのも、そこを狙ったからだと考えるのが妥当だろう」

 確実に倒せると思っているものの放った攻撃が、偶然眉間に当たるなんて事があるはずがないからな。

 バリアンさんはそう言うと、苦笑いを浮かべながら小さく首を振った。


 おしい!

 バリアンさんが考えた事はある意味あってますが、少しルディーン君を買いかぶりすぎですよね。

 まだ8歳の子供が、いくら戦闘民族(笑)グランリルの村人だからと言ってそんな判断力があるはずがないですよね。

 まぁ、眉間にマジックミサイルを当てたのは、確かに狙ってやった事ですがw


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